ライブハウスでもらったメンバー表に、パートを書く欄がある。
プロフィールにも担当楽器を入れたい。
でも、いざ書こうとすると少し迷います。
ボーカルは「Vo.」でいいんだっけ。
コーラスの「Cho.」は、何の略?
ギターとボーカルを兼任している場合は、どちらを先に書く?
楽器の略記号は、短く書けて便利です。
その一方で、ジャンルや国、楽譜の出版元によって表記が変わることがあります。「これだけが唯一の正解」というものではありません。
大切なのは、使う場面に合わせて、相手に伝わる形を選ぶことです。
この記事では、日本のバンド現場でよく使われるVo.・Cho.・Gt.・Ba.・Dr.を中心に、管楽器・弦楽器・打楽器まで、パート別の略記号を整理します。
結論|略記号は「統一」と「伝わりやすさ」で選ぶ

先に結論をまとめると、ボーカルは「Vo.」、コーラスは「Cho.」と書けば、日本のバンド現場では伝わりやすい表記になります。
代表的なパートは、次のように表されます。
| パート | よく使われる略記号 | 元になる英語 |
| ボーカル | Vo. | Vocal/Vocals |
| コーラス | Cho. | Chorus |
| ギター | Gt. | Guitar |
| ベース | Ba. | Bass |
| ドラム | Dr./Drs. | Drums |
| キーボード | Key. | Keyboard |
| パーカッション | Per./Perc. | Percussion |
ただし、海外向けのプロフィールや音源クレジットでは、「Vo.」よりも「Vocals」、「Cho.」よりも「Backing Vocals」と書いた方が明確です。
略記号を選ぶときは、次の三つを意識すると迷いにくくなります。
- 日本のライブ・バンド資料では、Vo.やGt.などの慣用表記を使う
- 海外向けのプロフィールでは、英語を省略せずに書く
- 一つの資料内では、大文字・ピリオド・区切り方をそろえる
Vo.は何の略?ボーカル・コーラスの略記号

ボーカルは「Vo.」
「Vo.」は、VocalまたはVocalsをもとにした略記号です。
日本のバンドプロフィール、ライブハウスのメンバー表、フライヤーなどでよく使われます。
| パート・役割 | 略記号・表記例 | 備考 |
| ボーカル | Vo. | 日本のバンド現場で一般的 |
| リードボーカル | Lead Vo./Lead Vocals | メインで歌う人を明確にしたい場合 |
| ボーカル1・2 | Vo.1/Vo.2 | 複数ボーカルを区別したい場合 |
| 男性ボーカル | M.Vo. | 使われることはあるが、統一された表記ではない |
| 女性ボーカル | F.Vo. | 使われることはあるが、統一された表記ではない |
M.Vo.やF.Vo.という表記も見かけますが、担当する役割を示すなら「Vo.1/Vo.2」「Lead Vo./Sub Vo.」の方が区別しやすい場合があります。
英語のプロフィールでは、次のように書くと自然です。
- Vocals
- Lead Vocals
- Backing Vocals
- Guitar and Vocals
「Vocal」は声や歌唱に関する形容詞としても使われるため、演奏クレジットでは複数形の「Vocals」がよく使われます。
Cho.は「Chorus」の略
「Cho.」は、Chorusをもとにした略記号です。
日本のバンドでは、メインボーカルを支えるハーモニーや掛け声などを担当する人に使われることが多くあります。
| パート・役割 | 略記号・表記例 | 備考 |
| コーラス | Cho. | 日本のバンド資料でよく使われる |
| バッキングボーカル | BGV/BGVs | Background Vocalsの略 |
| バックボーカル | BV/BVs | Backing Vocalsの略 |
| ハーモニー | Harmony Vocals | 海外向けクレジットで役割を明確にしやすい |
英語の「chorus」には、曲のサビや合唱団という意味もあります。
そのため、海外向けのプロフィールやCDクレジットでは「Backing Vocals」または「Background Vocals」と書いた方が、演奏パートとして伝わりやすくなります。
楽器とボーカルを兼任する場合
ギターを弾きながら歌う場合は、次のように書けます。
- Gt./Vo.
- Vo./Gt.
- Gt. & Vo.
- Gt.Vo.
ベースボーカルなら「Ba./Vo.」、キーボードボーカルなら「Key./Vo.」です。
どちらを先に書くかに、厳密な決まりはありません。
ボーカルとして紹介されることが多いなら「Vo./Gt.」。
ギタリストとしての役割を先に見せたいなら「Gt./Vo.」。
プロフィール全体で順番をそろえておくと、読み手が迷いにくくなります。
バンドの基本パートで使われる略記号

| パート | よく使われる略記号 | 元になる英語・備考 |
| ギター | Gt./Gtr./G. | Guitar。日本ではGt.が通じやすい |
| エレキギター | E.Gt./EG | Electric Guitar |
| アコースティックギター | A.Gt./AG | Acoustic Guitar |
| ベース | Ba./Bass | Bass。日本のバンド資料ではBa.が多い |
| ドラム | Dr./Drs. | Drums |
| パーカッション | Per./Perc. | Percussion |
| キーボード | Key./Kb./Kbd. | Keyboard |
| ピアノ | Pf./Pno. | Piano/Pianoforte |
| オルガン | Org. | Organ |
| シンセサイザー | Syn./Synth. | Synthesizer |
| アコーディオン | Acc. | Accordion |
ギターはGt.、ベースはBa.
日本のバンド現場では、ギターを「Gt.」、ベースを「Ba.」と書く形がよく使われます。
一方、英語圏のクレジットでは「Guitar」「Bass」または「Bass Guitar」と、省略せずに書くケースも多くあります。
機材の違いまで伝えたい場合は、次のように分けられます。
- E.Gt.:エレキギター
- A.Gt.:アコースティックギター
- C.Gt.:クラシックギター
- E.Ba./E.Bass:エレキベース
- A.Ba./A.Bass:アコースティックベース
ライブハウスへ提出する資料では、単に「Gt.」と書くよりも「A.Gt.(DI使用)」などと補足した方が、必要な機材まで伝わりやすくなります。
ドラムはDr.またはDrs.
ドラムは「Dr.」または「Drs.」と表記されます。
「Drums」が複数形なのでDrs.とする考え方もありますが、日本のバンドプロフィールではDr.も広く使われています。
どちらかが間違いというより、資料内で統一されていることが大切です。
ピアノはPf.と書くことがある
ピアノは「Pf.」と略されることがあります。
「Pianoなのに、なぜFが入るの?」と思うかもしれません。
これは、ピアノの正式名称として使われてきた「Pianoforte」をもとにした表記です。ポピュラー音楽や海外向けの資料では「Pno.」や「Piano」と書くこともあります。
アコーディオンは木管楽器とは分けて考える
アコーディオンは空気で金属製のリードを振動させる「フリーリード楽器」です。鍵盤やボタンを使いますが、一般的な木管楽器の分類には入りません。
略記号は「Acc.」が使われます。
メトロポリタン美術館の楽器解説でも、アコーディオンはハーモニカやコンサーティーナと同じフリーリード楽器として紹介されています。
木管楽器の略記号

| 楽器 | よく使われる略記号 | 元になる英語・備考 |
| フルート | Fl. | Flute |
| ピッコロ | Picc. | Piccolo |
| オーボエ | Ob. | Oboe |
| クラリネット | Cl. | Clarinet |
| バスクラリネット | B.Cl. | Bass Clarinet |
| ファゴット | Fg./Bsn./Bn. | Fagotto/Bassoon |
| ソプラノサックス | S.Sax./SSax. | Soprano Saxophone |
| アルトサックス | A.Sax./ASax. | Alto Saxophone |
| テナーサックス | T.Sax./TSax. | Tenor Saxophone |
| バリトンサックス | B.Sax./Bar.Sax. | Baritone Saxophone |
| リコーダー | Rec. | Recorder |
サックスは金属製ですが、リードを振動させて音を出すため、楽器分類では木管楽器として扱われます。
サックスの種類を区別する場合は、S・A・T・Bなど、音域を表す文字をSax.の前に付けます。
金管楽器の略記号

| 楽器 | よく使われる略記号 | 元になる英語・備考 |
| トランペット | Tp./Tpt./Trp. | Trumpet |
| トロンボーン | Tb./Trb./Tbn. | Trombone |
| バストロンボーン | B.Tb./B.Trb. | Bass Trombone |
| ホルン | Hr./Hn./Hrn. | Horn |
| ユーフォニアム | Euph. | Euphonium |
| チューバ | Tub./Tba. | Tuba |
| フリューゲルホルン | Flg.Hr./Fgh. | Flugelhorn |
金管楽器は、出版元や編曲者による表記の違いが出やすいパートです。
たとえば、トランペットはTp.、Tpt.、Trp.のいずれも見かけます。トロンボーンもTb.、Trb.、Tbn.があります。
譜面や編成表を作る場合は、途中で表記を変えず、一つにそろえると読みやすくなります。
弦楽器の略記号

| 楽器 | よく使われる略記号 | 元になる英語・備考 |
| バイオリン | Vn./Vln. | Violin |
| ビオラ | Va./Vla. | Viola |
| チェロ | Vc. | Violoncello |
| コントラバス | Cb./DB | Contrabass/Double Bass |
| ハープ | Hp./Hrp. | Harp |
| マンドリン | Mand. | Mandolin |
| ウクレレ | Uk./Uke. | Ukulele |
コントラバスは「Cb.」と「DB」のどちらも使われます。
クラシック系の譜面ではCb.、英語圏のジャズやポピュラー音楽ではDouble Bassと書かれることがあります。エレキベースと区別したい場合は、略しすぎず「Double Bass」と書く方法もあります。
打楽器の略記号

| 楽器 | よく使われる略記号 | 元になる英語・備考 |
| パーカッション | Per./Perc. | Percussion |
| ティンパニ | Timp. | Timpani |
| タンバリン | Tamb. | Tambourine |
| トライアングル | Tri. | Triangle |
| シンバル | Cym. | Cymbals |
| マリンバ | Mar. | Marimba |
| シロフォン | Xyl. | Xylophone |
| ビブラフォン | Vib. | Vibraphone |
| グロッケンシュピール | Glock. | Glockenspiel |
| バスドラム | B.D./BD | Bass Drum |
| スネアドラム | S.D./SD | Snare Drum |
パーカッションは種類が多く、略記号だけでは使う楽器がわからない場合があります。
ライブの編成表では「Perc.」だけで終わらせず、
- Perc.(Conga/Tambourine)
- Perc.(Cajón)
- Perc.(Shaker/Tambourine)
のように、使用する楽器を添えると準備しやすくなります。
コーラス・合唱で使われる声部の略記号

コーラス譜や合唱譜では、Cho.だけでなく声域ごとの略記号も使われます。
| 声部 | 略記号 | 元になる英語 |
| ソプラノ | S. | Soprano |
| アルト | A. | Alto |
| テナー | T. | Tenor |
| バス | B. | Bass |
| メゾソプラノ | Mez./M.Sop. | Mezzo-soprano |
| バリトン | Bar. | Baritone |
「SATB」は、Soprano・Alto・Tenor・Bassの4声部編成を表します。
一方、バンドで「Cho.」と書かれている場合は、声域よりも「メインボーカルを支える歌唱パート」を示していることが多くあります。
略記号に「.」は付ける?付けない?

Vo.やGt.の最後に付いている「.」は、単語を省略していることを示すピリオドです。
ただし、SNSプロフィールやライブのメンバー表では、次のようにピリオドを省く表記も使われます。
- Vo / Gt / Ba / Dr
- Vo. / Gt. / Ba. / Dr.
- Vo&Gt / Ba&Cho / Dr
どの形でも意味は伝わります。
見直したいのは、一つのプロフィール内で次のように表記が混ざっている場合です。
- Vo.
- Gt
- bass
- Drums
間違いではありませんが、見た目が少し散らばります。
「すべて略記号にする」「英語を省略せずに書く」など、ルールを一つ決めると整いやすくなります。
場面別に見る略記号の使い方

バンドプロフィールやSNS
短いスペースで担当パートを伝えたい場合は、Vo.・Gt.・Ba.・Dr.が使いやすい表記です。
例:
Nana|Vo. & Ba.
Hina|Gt. & Cho.
Mina|Dr.
海外の人にも読んでもらいたい場合は、省略しない形も選べます。
Nana|Vocals & Bass
Hina|Guitar & Backing Vocals
Mina|Drums
ライブハウスへ提出するメンバー表
ライブ当日の資料では、格好よさよりも、スタッフに役割が伝わることが優先されます。
例:
| 名前 | パート | 補足 |
| Nana | Vo./A.Gt. | ボーカルマイク使用、A.Gt.はDI接続 |
| Hina | E.Gt./Cho. | ギターアンプ使用 |
| Mina | Key. | ステレオDI希望 |
略記号だけで機材が判断しにくい場合は、補足欄に書き足すとやり取りを減らせます。
楽譜・バンドスコア
楽譜では、最初の段に楽器名を正式表記し、次の段から略記号を使う方法があります。
楽譜制作ソフト「Dorico」の解説でも、最初のシステムでは正式な楽器名、その後は短い楽器名を表示する形が一般的だと紹介されています。
移調楽器の場合は、「Cl. in B♭」のように楽器の調も添えると明確です。
CD・配信音源のクレジット
日本語中心のブックレットなら、Vo.・Gt.・Ba.などでも伝わります。
ただ、配信ストアや海外向けのクレジットでは、省略せずに書く方が読み手を選びません。
例:
Vocals:Nana
Guitar:Hina
Bass:Mina
Drums:Kana
Backing Vocals:All Members
レコーディングのトラック名
トラック名は、略記号に加えて役割まで入れておくと、編集時に探しやすくなります。
例:
- Vo_Main
- BGV_High
- BGV_Low
- Gt_Rhythm_L
- Gt_Lead
- Bass_DI
- Dr_Kick
- Dr_Snare
「Cho_1」「Cho_2」でも構いませんが、海外のエンジニアと共有する可能性がある場合は「BGV」を使うと意味を伝えやすくなります。
どの略記号を使うか迷ったときの考え方

楽器の略記号は、辞書のように一つずつ覚えることが目的ではありません。
迷ったときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。
誰が読む資料かを見る
バンドメンバーだけが見るセットリストなら、短い略記号でも困りません。
ライブハウスのスタッフ、外部の演奏者、海外のエンジニアが見る資料なら、正式名称や補足がある方が伝わります。
省略しても区別できるかを見る
「B.」だけでは、BassなのかBaritoneなのか判断できない場合があります。
「S.」も、Soprano、Saxophone、Synthesizerなど複数の意味に読めます。
区別しづらい場合は、Ba.、Bar.、S.Sax.、Synth.のように文字を増やせます。
迷ったら正式名称を書く
略記号を使わなければいけないわけではありません。
「この表記で伝わるかな」と感じたら、Guitar、Bass、Backing Vocalsのように書き切る方法があります。
短さよりも、確認のやり取りが発生しないことを優先した方がよい場面もあります。
よくある質問

ボーカルはVo.とVoのどちらが正しい?
どちらも使われます。
省略を示すならVo.ですが、SNSプロフィールやメンバー表ではVoとピリオドを付けずに書くこともあります。資料内でそろっていれば、どちらでも意味は伝わります。
Cho.はボーカルと何が違う?
日本のバンド表記では、Vo.はメインの歌唱パート、Cho.はメインボーカルを支えるハーモニーや掛け声を表すことが多くあります。
ただし、全員がメインを交代で担当するバンドもあるため、役割に合わせてVo.1、Vo.2、Vocalsなどと書いても構いません。
ギターボーカルはGt.Vo.とVo.Gt.のどちら?
どちらも使われます。
ボーカルとしての立ち位置を先に見せたい場合はVo./Gt.、ギター担当として紹介したい場合はGt./Vo.という選び方ができます。
ベースはBa.とBs.のどちら?
日本のバンド資料ではBa.が広く使われます。
海外向けのクレジットでは「Bass」または「Bass Guitar」と書いた方が伝わりやすくなります。
楽器略記号に世界共通の決まりはある?
すべてのジャンルで共通する、一つの表記ルールがあるわけではありません。
たとえば、アイルランドの作曲家・現代音楽を支援する「Contemporary Music Centre」の略記号一覧では、ギターをgui、ベースギターをbgui、ホルンをhnとしています。一方、日本のバンド現場ではGt.、Ba.、Hr.などが使われます。
楽譜制作ソフトでも短縮名を編集できるため、資料の用途と読み手に合わせて選ぶのが現実的です。
まとめ|短く書くことより、相手に伝わる形を選ぶ

ボーカルはVo.。
コーラスはCho.。
ギターはGt.。
ベースはBa.。
ドラムはDr.またはDrs.。
まずは、このあたりを覚えておくと、日本のバンドプロフィールやライブ資料を読みやすくなります。
ただし、略記号は絶対的な正解ではありません。
海外向けならVocalsやBacking Vocalsと書く。
ライブ資料なら、使用機材も補足する。
譜面なら、最初に正式名称を示す。
迷ったら、略さずに書く。
使う相手や場面が変われば、伝わりやすい書き方も変わります。
短く見せることよりも、誰が何を担当しているのかが伝わること。
そのための選択肢として、略記号を活用してみてください。
音楽活動を続けていくと、プロフィール、ライブ資料、音源クレジットなど、パート名を書く場面も増えていきます。
一つずつ、自分たちに合う形に整えていく。
それも、歌や音楽を続けやすくする小さな準備の一つです。
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