歌もプレゼンも、「マイクの持ち方」ひとつであなたの声はもっと届くようになります。

「同じように歌ってるのに、なんであの人の声はあんなに通るんだろう?」
違いのひとつとして、マイクの持ち方のコツを心得ているかどうかが考えられます。

マイクの角度や高さ、口との距離を少し変えるだけで、声の届き方や印象が驚くほど変わります。

 私自身、“マイクの持ち方”を意識するようになってから、声がクリアに通るようになり、聴き手の反応まで変わりました。

まずは「マイクの構造」を知ろう

まずマイクがどんな仕組みで声を拾っているのかを知るといいかもしれません。
マイクの上部、丸い金網のような部分は「グリル」と呼ばれ、その中には「マイクカプセル」という音を拾うセンサーが入っています。

このカプセルは、基本的に正面からの音に最も反応するように設計されています。
つまり、あなたが話す(歌う)方向とマイクの正面がずれてしまうと、せっかくの声がうまく拾われず、「こもる」「小さく聞こえる」などの原因になるのです。

グリルを外して内部を見ると、小さな円盤状の部品が確認できます。
この部分こそが、あなたの声の振動(音波)を電気信号に変換する“心臓部”。
マイクを少しでも斜めに向けたり、持つ位置を間違えると、このカプセルが音を正確に拾えなくなってしまいます。

だからこそ、「マイクの構造を理解して正しい方向に向ける」ことが、美しく通る声を出す第一歩なのです。

一般的なマイクは「単一指向性」タイプ

カラオケやイベント会場でよく使われているマイクの多くは、単一指向性(カーディオイド)マイクと呼ばれるタイプです。

このマイクは、ひとつの方向(正面)からの音だけをしっかり拾うように設計されています。
つまり、マイクの頭(グリル部分)があなたの口の方向を向いていないと、
声がうまく入らずに「こもる」「聞こえにくい」「音量が安定しない」といった現象が起きてしまうのです。

単一指向性マイクの内部には、前方からの音には強く反応し、後方や側面の音には反応しにくい構造のダイヤフラム(振動板)が入っています。
このため、あなたの声は正面からクリアに拾える一方で、周囲の雑音や観客の声などは拾いにくくなります。

たとえば、ライブやカラオケで「マイクを少し横に向けたら急に音が小さくなった」という経験はありませんか?
それは、この単一指向性の特性によるもの。
マイクの向きがわずかにズレるだけで、カプセルが拾う音の強さが大きく変わってしまうのです。

単一指向性マイクは、正しい持ち方と向きを意識するだけで、声の通りも音質も良くなります。

レコーディングには「無指向性」タイプも

一方、スタジオでのレコーディングや対談収録などでは、
無指向性マイク(オムニディレクショナルマイク)と呼ばれるタイプがよく使われます。

このマイクはその名の通り、360度すべての方向から音を均一に拾うのが特徴。
話者が動いても音量が変わりにくく、自然な空気感や臨場感を録音できるため、
アコースティックな楽器収録やインタビューなどに向いています。

ただし、どの方向の音も拾うということは、スピーカーの音や周囲の反響音も拾いやすいということ。
そのため、ハウリングが起きやすく、音が回り込みやすいため、
ライブ会場や講演のようにスピーカーが近くにある環境では扱いが難しいのです。つまり、無指向性マイクは「静かなスタジオ」向け、
単一指向性マイクは「人前で使う実践向け」と覚えておくとよいでしょう。

正しいマイクの高さと距離を意識しよう

マイクの持ち方ひとつで、声の聞こえ方や印象がガラッと変わります。
特に「高さ」と「距離」は、マイクの正しい持ち方を身につけるうえで欠かせないポイント。
カラオケでもプレゼンでも、少し意識するだけで声の通りが驚くほど良くなります。

NG:マイクを上げすぎる

マイクを顎より高く持ち上げて上からのぞき込むようにすると、
声がマイクの正面に当たらず、こもった音になります。
また、息がグリル部分に直接当たらないため、
声の抜けが悪くなり、聞き取りづらい印象になります。

NG:マイクを下げすぎる

胸のあたりまでマイクを下げてしまうと、
声が上方向へ抜けてしまい、マイクの音を拾うセンサー(カプセル)から外れます。
その結果、音量が不安定になったり、声が遠く聞こえたりします。

OK:下唇と同じ高さで、5〜10cmの距離をキープ

理想は、マイクの先端が下唇と同じ高さにくる位置。
マイクを少し上向き(5〜10度ほど)に傾けて、
口から5〜10cm程度の距離を保ちましょう。

この角度なら、声がまっすぐマイクの中心に届き、
「抜けがよく」「クリアで通る」音になります。
また、息や破裂音(パ行・バ行など)も軽減でき、自然で安定したサウンドに。

スタンドマイクを使うときも高さが重要

下唇の高さにマイクの頭を合わせよう

スタンドマイクを使うときも、マイクの頭(グリル部分)が下唇の高さにくるように調整するのが基本です。
高さが合っていないと、せっかくの声もまっすぐマイクに届かず、こもったり、抜けが悪くなったりします。

姿勢と高さをセットで整えるのがコツ

立って話すときは、軽く膝をゆるめてリラックスした姿勢を意識しましょう。
「気をつけ!」のように真っ直ぐ立つと身体が硬くなり、声も出にくくなります。
自然に立ち、肩の力を抜くことで、声がスムーズに前へ通ります。

座って話す場合は、足を軽く組むか、膝小僧を寄せるようにして姿勢を安定させましょう。
そのうえで、軽くあごを引いた自然な姿勢のまま、マイクの高さを下唇に合わせます。

マイクの先端が常に口の正面にくるよう意識すれば、どんな場面でも安定して聞き取りやすい声を届けられます。

正しいマイクの持ち方を身につけよう

マイクは「どこを持つか」で音の抜けや安定感が大きく変わります。
見た目のかっこよさよりも、マイクが正しく音を拾える持ち方を意識することが大切です。

NG:グリル(頭部分)を持つ

マイクの上部にある金網部分「グリル」を握ってしまうと、
内部の音を拾うセンサー(カプセル)が覆われてしまい、音がこもって聞こえる原因になります。
また、空気の流れが妨げられるため、ハウリング(キーンという音)も発生しやすくなるので要注意です。

見た目はクールでも、音質面では完全にNG。
ライブでもカラオケでも、グリル部分には絶対に手をかけないようにしましょう。

NG:マイクの下(しっぽ部分)を持つ

マイクの下部(ケーブルの差し込み口やデータ送信部分)を握ると、
接触不良や通信エラーの原因になります。
特にワイヤレスマイクの場合は、下部に電波を送受信するアンテナが内蔵されており、
手で覆うと電波が遮られて音が途切れることもあります。

OK:マイクの中央を軽く握る

最も理想的なのは、マイクの持ち手(ボディ)の中央部分を軽く握ること。
手のひら全体で包み込むのではなく、指先でバランスを取るように持つのがコツです。
小指が少し上がっていても問題ありません。

グリルや下部を避けて中央を持つことで、
マイクが本来の性能を発揮し、クリアで抜けのいい音を届けられます。

ハウリングを防ぐコツ|マイクをスピーカーに近づけない

ライブやイベント中、無意識のうちにマイクをスピーカーのほうへ向けてしまう人は意外と多いです。
しかしこれは、「キーン」「ブォーン」といった耳障りなハウリングの大きな原因になります。

ハウリングは、マイクが拾った音がスピーカーから出て、その音をまたマイクが拾って…という音のループ現象によって起こります。

マイクは常にスピーカーzの反対方向へ向ける

 マイクの正面(音を拾う面)がスピーカー側を向くと、ループが発生します。
 立ち位置を変えるときも、スピーカーとの位置関係を意識しましょう。

マイクを頭上に掲げない・下に向けすぎない

 音の反射でスピーカー側に音が戻ることがあります。
 基本は口元と平行、もしくは少し上向き(5〜10度)をキープ。

スピーカーの近くで話さない・歌わない

 特に狭い会場では、スピーカーの真前でマイクを使うと音が回り込みやすく、ハウリングが発生しやすくなります。